Aの記

読めば読むほど強くなる本を探しています。

ゴングまであと30秒

高橋秀実

ゴングまであと30秒

草思社 単行本1994 文庫版2013

 

 弱小ボクシングジムのトレーナー経験者が書いたノンフィクション作品。

ドラマ『弱くても勝てます〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜』の原作者。


 ファイティング原田の目にとまる程のボクサーだった、現役時代のジム会長が頑張れなくなったのは何故か、プロテストに落ちた2人の内の一人は目覚める事が出来、もう一人は何故駄目だったのか、センスの塊の中国拳法経験者の彼に何が足りないのか、センスのかけらも無いボクサーが誰よりもボクサーらしいのは何故なのか。

 

 一読では読み流してしまう所に熱いモノが隠れ、言葉じゃないものを感じさせようとしてる、作者の照れ隠しか、読み手の読解力の足らなさか、何度か読んでようやく腹落ちする。言葉にすると抜け落ちてしまうモノや、本人は語らないモノを何とか救い上げて文章化。

 努力とか忍耐とか以前に、覚悟を決める。これがこの本の肝かもしれない。

 

 表紙イラストは消しゴム版画で有名なナンシー関の作。作者の少し斜に構えた感じとコメディタッチなとこが合う。
第一章のタイトル(扉)の隣ページに「これは実話である。」とあるが、
黒い画面に 「it's a true story」 の文字から始まる映画の様で格好いい。

 

 1章から11章あり、1~7章がプロ未満の人々、8章からラストまでが4回戦ボーイ。
用語解説やボクシング業界の内情(桁外れに安いファイトマネーとか、在日が非常に貢献していたとか、副業禁止のボクサーはチケットで報酬をもらう場合があるとか)などが入り、そういうのも良かった。

 

 かつての日本チャンプを含めた指導者達が試合用のグローブを持ち上げ、
「ホンマようやるわ」

「こんな薄いグローブでな、わしらもホンマにしたんやろか、こんなこと」

「…不思議やなぁ」

と振り返るシーンに無謀な若者を理解出来ぬと言いながらも懐かしむ。
ボクシングの危険性と救いの無さ、わざわざソコに打ち込む若者の不器用な青春に自分を重ねる。
だからこその、叱咤激励と何とかしてやりたい、こういう生身の発言が頻繁に出て来るのが素晴らしい。

 

 頭でっかちの口ばっかりの自分には耳の痛い話が多いが、自分の頭を一発ガツンとやりたい時には良い。
頭では全部分かっているつもり、分かっていて更なる言葉を求める。分かってるけど出来ないやらない。
それじゃあダメなんだと、孔子論語で言ってるが昔から一緒か。
そうすると、教えて貰ったことを身に着ける迄は次は教えてくれるなと孔子に抵抗した孔子の弟子「子路」と
この4回戦ボーイは被るかもしれない。

 彼の真剣さは、かつて缶コーヒーのCMで「心に火をつけろ」と言うのがあったが、正にあれ。温度が高すぎて見えにく青白い火がメラメラいくような、アレが読んでる自分に感染してくるような気さえする。

 

 この作品は本になったものとしては作者の初期の作品だと思うが、小馬鹿にしたような軽い感じは既にある。
「20年ぶりに読んで書かれた文庫版後書き」によれば、今も「全く成長していない」らしいので、この人のスタイルなんだろう。
その軽い感じが切なくなったり、若者の闘志に煽られていくのもまたいい。

 

 不思議なもので有名なボクシングのノンフィクション小説「一瞬の夏」も本作の単行本版と同じ1994年の発表だと言う。
 あちらは世界戦を目指す、やはり実話を元にした物語だが、本作はプロテストに受からないとか負けすぎてプロ引退かもしれない人達の物語。
 登場人物のボクシングのレベルは比較にはならないが、どちらの作品も完全燃焼したい、後悔したくない、どこまでも打ち込んでみたい、しかし自分を変えたいのに中々変えられない人が出て来る面では同じ。
 
 本作ではジム入会動機が「何かに打ち込みたくて」の男が自分を変えずに、ただ打ち込み切った末の戦いぶりがを感動させるわけだけど、その執念たるや凄まじい。
なのに、その勝敗の行方とか試合後のコメントとかが、どっか抜けてて、それも良い。


息苦しい程の終盤なのに軽い読後感で終え、さあ、これから♪まで持ってくのは中々。

実は青春モノなのかなぁ、これは。

 

少し前にタイトルマッチがあったらしいが、この本の言う通りならボクシングジムの入会者が今頃増えているのだろう。。

 

 

新開ボクシングジムオフィシャルサイト

本編に書かれてるトレーニングスケジュールの画像も見れるが、なるほどほぼ一緒。
本編登場の色紙「努力に勝る天才なし」もある。

フェイスブックもあり新開会長のミット打ち動画まであるが、残念ながら2018に廃業とある。

新開ボクシングジム - ホーム

 

 

ちなみに、「平成兵法心持。―新開ジムボクシング物語」と言うタイトルで中公文庫からも出ている様だ、そちらは2004年。

 

 草思社の文庫版後書きに「ゴングまで30秒」の30秒は試合終了まで30秒と、試合開始までの30秒の意味を込めたと、タイトルの種明かしが20年越しで行われているが、もしかしたら中公版文庫でタイトル変更を受けて、不服の気持ちが有ったのかな。

それとも別出版社から出す際にタイトル変更する取り決めでもあるのかな?。

 作者自らタイトルについて説明するのも珍しくて面白かった。

 

追記

8章から9章の試合の対戦相手が、ブログに当時の事を書いているのを見つけた。

本編の転載が多く結末が分かってしまうので、出来れば本編を自分で読んでからリンク先も見て欲しい。

作者が取材に来た事を「偵察」と受け取ってることは興味深いし、試合後の対戦相手側としての感想も冷静で良い。今やアメーバブログのラーメンマニアジャンル部門でランキング4位とラーメン食べ歩きに能力を開花させてしまってる問題等、興味深い。

スイーツ好きの力士とラーメン好きのボクサーでは好きと競技の関係性が大分違う。

重すぎる十字架を背負ってたな。

  1. ゴングまであと30秒 | ピップのブログ
  2. ゴングまであと30秒 その2 | ピップのブログ
  3. ゴングまであと30秒その3 | ピップのブログ
  4. ゴングまであと30秒 その4 | ピップのブログ
  5. ゴングまであと30秒 その5 | ピップのブログ
  6. リングネーム | ピップのブログ

 

スラムダンク桜木花道が「オヤジの栄光時代はいつなんだよ…」と言うシーンがあるが、プロボクシング経験は栄光時代の一つになるだろうなぁ。

 

2023年3月26日に更新しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カルト宗教信じてました。やめました。」たもさん 経験者による漫画化の強さを感じる。

たもさん

カルト宗教信じてました。 「エホバの証人2世」の私が25年間の信仰を捨てた理由

彩図社 2018/5/1

 

たもさん

カルト宗教やめました。~「エホバの証人2世」の私が信仰を捨てた後の物語~

彩図社 2020/1/28

 

タイトルそのままの作者自身が2世としてカルト宗教に入信し辞めるまでの物語とその後日談。

 

自分に近い人を疑ったり悪く思ったりすること、

それ自体が自分の人間性が悪いのではないかと思ってしまう。

 

そういった時にこの本が役に立つかもしれない。

そうでなくとも「転ばぬ先の杖」

巻き込まれないために、また身近な人を救えるように。

 

エホバの証人、「ものみの塔」などと言う言葉が身近で見聞きされたら読んでみましょう。

 

可愛らしい絵柄と軽い口調で読みやすく、宗教で不幸になってしまった人達の陰惨な空気が控えめなのも良い。
この人がもし信仰を続けていれば、このタッチで勧誘向けの本を描いていたかもしれないな。
と思うと少し怖いが、辞められたからこその明るい感じだと思おう。

今もって信仰中の母親もそれなりに幸せそうに描いてる辺りも良いのかなぁ、どうかなぁ?。

 

こういう話を読むと、どの家もバリアーの意味でも戒律弱めの何かしらの信仰を持っていた方が良いのかな?と思ってしまう、宗教教育の必要性を考えさせられる。

 

単に被害者意識だけでなく、信仰時の傲慢な自分を描いてくれてるのも貴重。

 

 

これがデビュー作とは思えないレベルで、漫画を描くことに手慣れている。
全く読める、普通に読める、何なら読み返している。

 

ネット上で、このレベルのものが趣味の延長線上で大量生産されているのは
恐ろしい話だ。もちろんプロを目指して描いてる人も相当数いるはずで、
それが無料コンテンツになりプロの首冴えも絞めてしまっている現状もありそうではある。


が、そっからこの作品みたいに出版社からプロ扱いで商品化される訳で
出版社に持ち込んでダメ出し受けて闇に葬り去られることを思えば
バンバン世に出して万が一にもかけるのはありなんだろう。

と言うかそういう時代になって10年位経つのかな。

 

いや、高橋留美子の時代も同人誌界隈からと言うし、そもそも裾野が広大なのか。
日本の漫画の書き手の層の厚さを感じる。描ける人はドンドン描いて欲しいし出版社も行けると思ったらガンガン、スカウトすればいい。

かつて柔道では日本一になれば世界一、ホンダはバイクで世界一になれば日本一、高校野球なら関西一なら日本一、みたいなノリがあったが、漫画はホントに日本で一番なら世界一かもしれん。
世界知らないけども。

 

特にこう言うテーマを誰かに発注かけるのは難しいだろうから、よくぞ書いてくれました。
よくぞ見つけて本にしてくれました。と言うことです。

 

作者のツイッター

twitter.com

 

作者のインタビューがyoutubeに出ている。

youtu.be

youtubeの2つ目

www.youtube.com

 

 

 

 

2023年3月22日に更新しました。

 

メガドライブミニ2発表

出るとは思っていたが、ゲームギアミクロが出た時点で諦めた。

が、しかし、出るとのこと。

絶滅種と思われたメガドライバーの生存がメーカー的にも確認できたと言うことか。

 

メガドライブミニ2

株式会社セガ 2022年10月27日発売予定

sega.jp

メガドライブミニ2は収録タイトル50本超のうち20本がメガCD。半導体不足で開発中止も危ぶまれたなか生まれる“新ハード”誕生秘話を奥成洋輔氏に直撃 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

・50タイトル以上を予定、メガCD」(20)タイトルも含む。

・発売日は10月27日。

・価格は10,978円(税込)

発表されてるソフト群。

シルフィード
シャイニング・フォースCD
ソニック・ザ・ヘッジホッグCD
『夢見館の物語』
ぽっぷるメイル
バーチャレーシング
『ボナンザ ブラザーズ』
シャイニング&ザ・ダクネス
サンダーフォースIV』
まじかる☆タルるートくん
ファンタジーゾーン』(ボーナスタイトル)

 

嬉しい。

発売までに月1程度に数回、残りのタイトルを発表していくんでしょう。

売れて、サターンミニやメガドラ以前のハードとかまで出せたら良いな。

未プレイの人がスーッと遊べるのは、ソニックCD、シャイニング・フォースCDボナンザブラザーズ、タルるーとくん、この4本位か。

作り手もセガ脳だし、万人受けがなんたるかなんて分からんよね、自分も分からない。

 

ほぼ遊んでるけど、ぽっぷるメイルは未経験なので楽しみ。

インタビューにある様にセガらしさメガドラらしさを出そうとすると、どうやっても偏る。偏りは悪いわけじゃないけど、All in Oneの息抜きゲーム機とすると、力作ぞろいの重厚な布陣と言うよりバリエーション豊かな方が良い、自分は。

麻雀、ゴルフ、ピンボール、クオータービュー作品、スポーツ、こういうのが欲しい。

うる星やつらの新作アニメがやるらしいから、それは入るかな?ゲームアーツは功労者だから一杯入ると良い。

ビクターの名前がインタビュー出てるけど、ビクターも功労者だから色々入るといいな。

6bコントローラーだから格闘ゲームも一つは入れるのかな、この前がスト2だから今度は餓狼か。ボタン数とは別問題だけどVF1はいらんと思う、あれならモータル2とかで。

と言うか、32Xタイトルないな。

あるのか?32Xミニ、ただ、インタビュー読むと32X作る位ならサターン作るよとも言ってるしな、ないか。

 

持ってたゲームが半分に持ってないのが半分位だと自分にとっては都合がいい。

 

うーん、でもやっぱり、このハードならではタイトルが有った方が良いんだろうな。

まぁ、ゲーム機がたくさん売れるタイトルを入れてくれればいいです、はい。

 

取りあえず「夢見館の物語」は素敵なお話ですのでリアルタイム世代で未経験の人はやってみて欲しい。選択毎にムービーが流れるだけのゲームで、雰囲気ゲームですし、今となってはクソゲー扱いかもしれないが,絵と音に雰囲気があって良いです。

つみきみほ主演の「精霊のささやき」とかあの辺がヒントなのかな。

良いニュースを見ると元気が出る。

メガドラミニ1自体は良くできたハードで今も時々遊ぶ。

国別に入らなかったタイトルに悔しさは感じるが、仕方ない。

パッドが良いし、ゲームをしまう感じも生活にメリハリついていい。

続報に期待する。

 

2022年6月19日に更新しました。

メガドライブミニ2((税別)9,980円の(税込)10,978円以上で買うのはすすめない。Amazonが販売元の定価売りが望ましい)

メガドライブミニ(ミニ2ではない、これも本当は(税別)6,980円)

↑どちらも定価の予約が復活するんじゃないかと思う。

BEEP! メガドライブFAN―2誌合体! メガドライブミニ総力特集号― (ATMムック)

社会人心得入門

山口瞳

社会人心得入門

講談社+α文庫 2003

 

サントリーの宣伝や小説「江分利満氏の優雅な生活」で有名な山口瞳の御言葉集だ。

昭和に幾らか記憶がある僕は、トリスのTVCMのあの感じと山口瞳が直結している。

江分利満氏の優雅な生活もどこかにあるはずだ、アレは結構よいものだ。

裕福でなくても胸を張って多少無様でも気持ちだけはカッコつけて生きようぜ、的な世界感で、まぁ昭和である。

 

1978年から1995年までのサントリーの全国紙新聞広告、これがこの本の肝だろう。

1978年4月1日から1995年4月1日までほぼ同じ日付の新入社員向けメッセージが並ぶのは壮観である。

1月15日版もある、こちらは成人の日にちなんだもの。

どちらも若者への提言と酒を勧めている。

亡くなった年まで書いてるのだから恐れ入る。

願わくば新聞広告そのものの写真が良かったかな。

 

後は自身の著作物から適当に集めてきたものだ。

この本の別タイトルでの出版が1998年、亡くなったのが1995年なので

作者がなくなった後に家族の了承を得て編集出版したのだろう。

それを改題して出したのが2003年。

息子さんと酒友達らしき豊田健次氏の後書きが付く。

 

内容だが、出典一覧だけで7ページに渡る、つまり寄せ集めもいい処で、切り貼りと言うかモザイク模様と言うか、読み難い。

せめて文章量を揃えるとかどうにかできなかったのかと思う。

出典も一つずつに付けずに後半に一括で並べてしまって、御言葉の前後の文脈を元の文章から探し出すことも出来ない。

確かにこの手の本人無許可だろう御言葉集、例えばアランの幸福論だとか二宮翁夜話だとか文量も統一されてないし内容の重複もあるけれど、中身の充実度が違い過ぎる。

 

Q、昭和のそこそこ成功したオジサンの独り言をどう受け止めればよいのか?

A、同時代を経験したオジサンが共感すればよいのです。

そう、つまり若者向けに助言している体で書かれているが、この文章の大半は山口瞳と時代感を共にした人たちへの「なー?俺たちそうだよなー?」なのである。

 

つまり、新入生諸君は

「へーそうなんですねー」と受け止めればよいのである。

 

しかし、この当時と今とでは企業と社員との信頼関係も違うし、殆ど参考にならないと思うが、社長とか上の方の社員にこういう価値観の人が少し残っていると思っておけば役に立つかもしれない。

僕も酒の飲み方がとか、飲み会がとか、金じゃないんだよ、とか色々言われた気がする。それが良かれと思って言ってくれていると受け取れるならストレスが少しは減って精神安定上良い効果を生むかもしれない。

 

ん-、時代が変わったのか、作りが悪いのか、ここ迄イライラするもんなんだなぁ、的外れな言葉というのは。全部が全部じゃないが半分は読むに堪えない、残りの半分はちょっと良い、残りの半分はどうでもいい。ちょっと良いは中々ちょっと良いので砂浜から綺麗な貝殻を見つける気持ちで読むなら悪くない。

 

晩年の死を強く意識しだした文章は、良い。

特に95年の1月の新聞広告は何故か文章量がそれまでの1.5倍ある、4月のは意味が理解し辛い。病苦の中で書いたであろう文章はやはり違ってしまうんだろう。

その辺の文章でようやく、共に生きる苦しみが分かち合える気がする。

阪神大震災にオウムの地下鉄サリン事件、その年に「昔はさぁ」ではもう何も解決できない事が流石に理解されたのかもしれない。

 

「俺の若い頃は!」ではなく、今を何とか生きる、今が踏ん張り時なんだ、そして頼むよ若いの、頑張ってくれ、

 

そんなのがチラッと見えたのは収穫だった。

僕は酒を殆ど飲まないけど、サントリーのTVCMもサントリー提供の番組も好きなものが多かったから、憧れではあったのよね。その内に何か部屋に飾ってみよう、チョットは飲んでみよう。

 

 

 

 

2023年3月28日に更新しました。

 

道案内の上手な人

道案内の上手な人に会った。
彼女はセブンイレブンの店員。

スマホの電池が切れ、込み入って妙に木々が多く見通しの悪い所で
日が長いとはいえ夕方も大分進んできた、迷子特有のあの不安感が出てきたが、
人に道を聞くのは苦手ですれ違う人に聞くかどうか10分は迷いつつ覚悟を決めてコンビニへ。

店に入り、品出し中でしゃがんでいる店員に道を聞きたいと伝えると立ち上がった彼女は高身長で
男の自分と比較しても大差ない。
茶髪と金髪が混じったような髪を後ろでまとめ、まつ毛に何か加工をしてるのか黒くて多く見える、目の周囲にはラメでも入ってるのか汗ばんでるのか、キラキラしてる。
目自体はカラーコンタクトでもしてるのか、瞳が黒ではない、単にハーフとかかもしれない。
大人しくて真面目と言うよりかは活発で不真面目に見える。
立ち姿良くハキハキしてるを飛び越えてパワフルである、喧嘩も強そうだ。

彼女は僕を連れ立って店の出入り口まで来てくれて
「どこですかね!?」
自分の住んでる自治体名を伝えると
「〇〇駅とか、○○通りとかハッキリした目的地が有った方が案内しやすいですね。」
じゃぁ、○○駅でお願いします。
「はい、では大まかに3つの行き方があります。」
遠回りでも良いので、一番迷いにくい奴でお願いします。
「そうですか、ではこの道を左にまっすぐまっすぐ行って下さい、途中下り坂になりそれも非常に長いですが信号がありますそこを右に」

「道なりに進んでドンツキを左に」

と進んでいって、
曲がる角は4つで、3つを過ぎたあたりで見晴らしが良くなり
目的の方向に有名な商業施設が見えてくるはずだから着けるだろう。
とのこと。

あまり丁寧に教えてもらうと申し訳ない気持ちにもなり深く頭を下げ感謝の意を伝え店を出る。

正直、角を2つも3つも曲がるとまた迷うかもなぁとも思ったが、問題なく到着できた。
ホントに遠回りだった可能性もあるが、交通量の多い見通しの良い道に早めに出そうとしてくれたのが良かったのだろう。
「左側にセブンイレブンが」「交差点にファミリマートが」「向いにローソンが」
と何故かコンビニ情報を入れてくれたので心理的安全が保たれた。
そこでまた聞けばいいや♪と思えた。

親切だな、相手のレベルに合わせて道案内出来る頭の良い人なんだろうな、
仕事も出来るんだろうなと思った。

 

※駅は地下鉄で線路が無い。

※ドンツキという言葉が引っかかってしまったが関西の方の言葉らしい。初めて聞いた。

 

 

関係ないけどちょっと良い映画

迷子の警察音楽隊 Bands Visit

迷子の警察音楽隊 Bands Visit

  • サッソン・ガーベイ
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本田宗一郎 私の手が語る 講談社文庫

本田宗一郎

私の手が語る

講談社文庫 1985

 

やってみもせんで

 『私の手が語る』が文庫本になるそうだが、中身はそのままで値段が安くなることはうれしい。エンジンの性能を落さず、コンパクトにするようなもので結構なことだ。

 

 この文庫本には2つの後書きがある、1つ目は単行本時のもので、2つ目は文庫本になった際のもの。その文庫本時の後書きにあるのがこの文章だ。

なるほど、本田宗一郎はこういう人かと。「らしい」といえば「らしい」し、こっちも嬉しくなる。

 インタビュー記事や寄稿文等をまとめてもらった本は以前から出ていたが、自分の意向で書いた最初の本がこれであると言うことが書いてあるのが1つ目の後書きで、本田は思うままに書いたと言うが手書きのイラスト等もあり、それなりに力作のように思える。

 中見出しの「やってみもせんで」を筆頭に有名な本田語録がバンバン出て来る。

 多方面に渡って思う所や経験談を書いていて生き生きとした本田宗一郎は社長引退後も元気に活動してたんだろうなと思う。目に浮かぶ様でニヤニヤしながら読んでしまう。

 神格化され過ぎた本田宗一郎の実際については「ホンダ」の企業イメージ戦略の面も大きいらしく、少し気を付ける必要はあるが、気合いの入ったお爺さんではある事は間違いないだろう。

 現代の上手に無難にコスパ重視の世界観とは真逆の、1個1個の問題に体当たりで跳ね返されては乗り越えていく考え方は大変だろうが、日々、自分が強化されていくと言う面で最終的には勝つんだろうなと説得力がある。

1つの問題に全力で当たってみる、ちょっと必要なことかもしれない。

3月のライオンの登場人物、野火止あづさが言う「お得なルートばかり探して弱くなる」これは避けたい。

問題と向き合う精神力を付けたいところ、ただ出来ない事ややりたくない事なんて全くやらないと断言する本田宗一郎、周りは大変だったろうなー。

 

 ちなみに「語る手」は左手である、左手で支えて右手の工具で作業をするので怪我をするのは左手になる場合が多い、その左手の傷跡解説も面白い。

そして、「夢中になって仕事をしていると品物の出来上がりだけを考えていて自分の手など見ていないのだ。」ここも、今俺カッコ悪くないかな?とか思う自分を戒める。

 

後書きに戻る、1つ目の後書きには、これは徒然草の様なもの。2つ目の後書きには、これは私の幸福論であった。とある。

自分の人生観やこれまでこれからを本を書く為に総ざらいして、見栄張ることなく自然になる様にまとめて書いてみた、それを改めてみるとそれが幸福論と感じられるモノになっていた。

 こんな幸福な人生はそうは無いと思った次第。

 

2023年3月28日に更新しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読む時間 アンドレ・ケルテス 創元社

アンドレ・ケルテス

読む時間

創元社 2013

 

本があなたにウインクしたのです

写真集を買うことは少ないが、この本は4回買っている。

1冊は自分用、1冊は母に、2冊は知人に贈った。

本をと言うより、この本を見ている時間をプレゼントしたかった。

 

殆どのページに読書している人たちの写真が載っている。

その人たちの夢中になって本を読む姿は清々しく見える。

集合住宅の上に水着で寝そべりながら読んでる本の内容や、落ち葉に敷物しいて姿勢正しく読んでる本の内容がなんだかわからないが、多分、良い感じの気持ちで、心の中は別の世界にいるんだろう。

 

そういう息抜きが必要だ。旅行の様なもので心をここからどっかに飛ばす必要がある。

そんな感じで買い、人に贈った。

紙カバーが本全体に足らず上の方は本体が出てしまっている。微妙に思ったがそういうデザインなんだろう、デザインの人の気持ちは分からない。

布張り風の本体だが、凸凹させたビニールじゃないかな、質感はいい。はみ出た本体上部に原題の「 ON READING 」が見えててカッコいい、触ると文字が刻印の様にちゃんとへこんでいる。

紙カバーも艶消しで雰囲気が有る。こういうのを持つと物質としての本は良いなぁと思う、、、が果たして全ての本がこれだけ凝ってるかと言ったら、そうでもないし、そこまでする必要もない。この本は特別だ。

 

中見出しの「本が~したのです」は、日本版だけにつけられただろう谷川俊太郎の巻頭詩の一説。

 

学芸会の楽屋か天使の恰好をした少女が読む本は舞台と無関係かもしれない、捨てられて紙がバラバラになった漫画を読みふける少年、ベンチに並んで腰掛け一冊の本を2人で読む男女、場所も屋上から川べり、ニューヨーク、パリ、お茶の水、マニラ、船上まである。

よくある、無人島に本を持っていくとしたら何持ってく?は逆にドコ迄本持ってて読める?もあるかもしれない。

 

最後のページが、身寄りも無く金もなく、救護施設で死を待つばかりの老女の読書の様に見える。

 

本を読む時間は自分の時間があるということで、取りやすい所に置いて

気が向いた時にこの本を手に取り自分の時間を手に入れることにしてる。

 

2022年6月27日に更新しました。

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