「弱くても勝てます」 開成高校野球部のセオリー
高橋秀実 新潮社
まずは、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2022夏の高校野球の予選がやっている。
開成高校は勝ち進み、今日11:30から試合だ。
ここでLIVE中継が見られるかと思う。
--------------------------------
中継ここまで
内容
東大合格者41年連続1位の開成高校の硬式野球部を
題材にしたノンフィクション。
生徒も先生も実名で実話の大変な本である。
2014年、日本テレビのドラマ「弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~」の原作だ。
ただ、ドラマの設定は大分違い、モデルとなった開成高校や生徒の名前は使われていない。しかも共学だ。
それはおいといて、原作の方は
超進学校の開成の野球部で、何年かに1度勝てるどうか。
大会の予選ともなれば1回戦突破が目標レベルだったのが青木監督を迎えてから超攻撃型野球を掲げ甲子園の東東京予選でベスト16まで行ける様になってしまった。
その内訳を取材している。
グランドを使っての練習は週に1回程度で後は自主練が多く、野球経験ゼロの選手すら居るチームが何故に勝てるのか?と言う話だが、本当に面白い。
選手達がみな素直にインタビューに答えてくれる所も素晴らしいし可愛らしい、自分で自分の長所や欠点を把握して自分なりに解決向上していこうとする姿勢は頭が下がる。
特に監督の言葉を自分の言葉に置き換えて理解していこうとするとこは理屈っぽいのが過ぎたるは及ばざるがごとしで収集つかない。そこも面白いんだけど。
実名なものだから選手の名前を検索かけると、将来は国の為にと言ってる子は財務省に、研究者と高校野球の審判にと言う子は東大の研究者で六大学野球の審判に、医者になりたいが外科か内科で迷ってると言う子は何故か歯科医に、調べればキリがないが、立派になってる。国籍が変わってるとかも中々凄い。
将来良い学校に子供を入れたい親の人なんかは読んでみても良いかもしれない、家庭環境や子育てのヒントが見える気がする。
とは言え、そもそも(開成の学生にとって)野球はムダなのだ。
から始まる青木監督の部活野球論も変わってる。
「俺が俺が」で良い、チームに貢献なんて必要ない。
バットに当てて遠く飛ばすのが一番気持ちいいはずなんだ、
自分が主役で大胆にのびやか大暴れすればいいんだ。
と。
彼らの人生を決めるのは大学受験であり、主に東大に受かるかどうかだ。もっと言えば、それすらその先の目標の為の関門の一つでしかない。
負けられない戦いは試合ではなく試験であり、練習ではなく勉強だ。
だから、野球にさける時間も体力も限られる、もし仮に練習時間を増やしてチームが強くなったとして東大合格者数が減ったら、監督は解雇だろう。
学生も開成に入った意味が無い。
その辺は野球強豪校と決定的に違う。
OBの言葉もある、
挫折感を味わってほしい、そして努力や忍耐、愚直にコツコツの成果を感じられれば将来絶対に役にたつはずだと。
選手生命を高校時代で終わらせる程に消費させてしまう名監督が居る世界で、青木監督は生徒達に目いっぱい野球楽しんで欲しいと思い、OB達は精神的なモノを手に入れて欲しいと思ってる。
自分達の最も強い勉学ではない、それでも好きな世界で、「いやいや自分なんかが」と思わずに。
対戦相手に失礼が無いレベルまで技術を身に着ければそれでいい、試合が成立すればいい、それを誇ればいい。
そして堂々とドサクサに紛れて強豪校を打ち倒す。
失敗を恐れて守備固めばかりしてても弱いチームがホントに強いトコには勝てない。相手とまともな試合が出来ると思うな、ミスはゼロにならないんだから
そもそも一生、バントと守備練習で終える気ですか?と。
だから、上手く行く前提でフルスイング、打ちまくって相手を戦意喪失させればOK。
割と色々な面に応用が利きそうな勝負哲学が有る。
どっか間抜けでのんびりで幾らかクールで、でも自分なりに一生懸命な生徒と、温かく情熱的な監督の相性はいい。
インタビューからチラチラ見える生徒と家族との関係性の確かさも良い。
読みやすく、良い気持ちになる本である。
この作者は本当に良いね、人柄かなぁ。
取材期間の長さ、関係者との信頼関係構築と、様々な苦労・配慮をしているのだろうが、その辺を感じさせぬ軽い文体に感心するし、また、しみじみとした気持ちにもなる良作である。
少しだが続編が有る。(Web版のフライデーで無料で読める)
ちなみに、岸田総理はここの野球部出身らしい。
ついでに僕の母校は昨日負けた、残念。
自分の母校に硬式野球部が有り勝ち進んでいるのであれば上記のリンクから試合中継が見られるかもしれない。
20230326更新