Aの記

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「経営に終わりはない 」藤沢武夫 ホンダを世界一にした影の男


経営に終わりはない

文春文庫 藤沢武夫 発売日:1998年07月10日

 

必読書!

これは素晴らしい。世界のホンダの裏番長「藤沢武夫」だ。

 

昭和63年に亡くなられているが、後書きの日付は1986年10月で昭和61年10月。
死ぬ2年前、最晩年と言っていい時期の自伝になる。

 

本田宗一郎との関係がある期間・ホンダとの関わりがメインなので、

どうやって宗一郎を知り、どのような出会いになったのか、

ホンダを育て上げ、

会社での役割を若い人に任せ減らしていって「引退」と言う切り札をどう使うかまで、

この中の期間が非常に濃密に描かれている。

また、

本田さち氏(宗一郎の妻)が作ってくれた山盛りのうどんのシーン、

藤沢の妻に宗一郎が会いに来てくれるシーンと

互いの妻に会いに行くシーンをワザワザ描いている。

 

藤沢武夫自身の始めから終わりを見据えた関係

また、宗一郎の人間性を描くうえで非常に大事だったのだろうか。

仕事上ではあるが、本田(夫)藤沢(妻)とと言う関係性をだぶらせている印象も受ける。

 

本自体は、一種の答え合わせと言うか、本田宗一郎が自伝で語っていたことや有名な話を
別な角度から書いているので、

 

本田宗一郎の本では「送り出してくれた」が
藤沢「いてもしょうがないから出かけさせた。」になるとか、
普通に笑える部分も多いのだが、

本田「ホッとした」
藤沢「本田は涙をぼろぼろ流して喜んだ」
みたいな違いもあり、

 

所謂、本田宗一郎逸話の裏話集としても読める。


それはそれとして、重要なことは2点
・藤沢の経営思考の足跡がたどれること
・藤沢の本田LOVEがとんでもないこと。

 

経営に関して僕は分からないが、

一つ一つの窮地においてどう考えて対策していったかとか、失敗した時どう思ったからどう変えた、こういう予感はあったのにみすごしてしまっていたとか、昔の事なのにその時その時の心情が出ているのも良い。

まぁ、技術面に関しては本田にぶん投げておけば何とかしてくれるので自分はそれ以外を一生懸命やる感じだけれども。

藤沢が要望を出しておくと、その時は対応してくれなくても本田の頭には残り、なんだかんだで実現してくれるのを利用して、とりあえず言っておくのも面白い。

 

成功の上限が出来ないように青天井の道を選択し続けるとか、常に後顧の憂いを断つと言うか心配事は出来るだけ残さない、失敗が起きた際もフォローは最速でするとか、その失敗からも生かせるものは生かしていく。

特に何か新しい行動を起こした時の利害関係者、工場立てるなら地元住民とか新しい販売方法であれば販売店とか直球で言えばお客さん、部品を作ってくれる会社、先行している同業の大企業とか、そういったところと対立構造が生まれないように根回しというかね。(この辺はカシオも新規参入する際に気を遣っていた気がする)

兎に角、先の先の方まで見通して手を打っていく、転んでもただでは起きない感じ。

桁外れの成功を受け入れる準備というかね。

そもそものスケール感が違う、まぁ本田に対する信頼も凄いわけで。
書き上げてもキリない位に書いてくれてる。

 

参考にした考え方や読んだ本や関係者の名前、時代背景など、その辺を書いてくれているのも参考になる。多くはないが本当にこう言うのが助かる。

 

本田LOVEは、有名な最後のシーン、藤沢が「自分はもう辞める」と言ったことに対して本田が「おれもだよ」のシーンが究極になるが、
実はアレが人づてであったことが書いてある。みんな知ってるのか?。

 

それを人づて、伝言にしてしまったのが最大の過ちだったと語っている。
やはり勇気をもって最後の告白「俺はやめるからお前もどうだ?」と堂々と言いたかったんだと思う。それが言えないところに本田との心の距離が少しできていたのか藤沢本人に引け目が出来てしまっていたのか。

社会活動を沢山やってる本田が変わってしまったと思ったのかな。

もう自分の片思いなのだろうと思ったら、全然両想いだったと言うね。

 

ここの所は最後まで読んで、自分なりに感じて欲しい、乙女のようである。

 

トイレの石鹸入れ替えて掃除までしてる本田宗一郎を横目に、自分の事務机の上すら片せない若手にキレて大暴れとかね。中々良い。

何でもいいから本田宗一郎の本を先に一冊読んでからこの本が良いかな。

 

本田の天才を評価しつつ本田の居なくなった(通用しなくなった)本田技研をどうするか?を考え続けて人を育てるシステムを作るところや、本田と藤沢が居なくなった後にしっかり続けられることでようやく仕事が完成、その為の準備を着々とする考え方。
社会貢献と言うか社会の規範としての意識も本田以上に高いかもしれない。

ただ、本田のそれは「こころ」の表れだけど、藤沢のは企業ホンダが大きくなっていく上で抑えていく要素だとの考えの違いはある。

本田の異常な潔癖性・公平性と相性のいい考え方だわな。相互に影響し合ったせいかも。

 

特に、本田に社長を取るか技術者を取るかの2択から社長を選ばせる際の厳しさと言うか、はい、これで「本田宗一郎の次の時代へのバトンタッチ」第一段階完了!

的な冷たい感じとか。ちょっと凄い。この人は愛されないわぁと感じる。

 

銀河英雄伝説で言う所のキルヒアイスからオーベルシュタインへの転向を自分の中だけでやってのけているところも凄い、何ならヤンウェンリー的要素すらある。

 

あと、世代の限界というかね、どんなに頑張っても自分の基準みたいなものは変えられない、新しい問題に立ち向かう為には、その時代の価値感を持ってる人でないととか・。「いいかい?ユリアン…」。

 

言っちゃ悪いが本田宗一郎の本の数倍勉強になる。
が、暗い、なんか暗い。

「やりたいことをやれ」が本田だが、この人は
ずーーーーっと、誰かの為に働いている、気ばかり遣っている。


本田がやり易いように、工場設置で有れば地元の人に喜ばれる様に、取引先の銀行に不安感を与えないように、後継者たちの社会的信頼度が増すように。
取引先の整理も悪役はこの人になるのだろう。

出来てすぐの鈴鹿サーキットの泥で白い靴が汚れた女性まで気にしている。

 

25年が限界です。
とあるが、この人の背負ってきた本田の負(犯罪的なことじゃなく単純に心配ごと)の部分に耐えられる限界が25年だったんじゃないかと疑う。

その後の社会的活動がほぼ無いことも。
そういう点で、何か暗い気持ちになる本ではある。

 

その点、本田の本は励まされる部分がある。
これが、本田が社長に向いていて藤沢が向いてない部分なんだろうな。

 

あっと、本田の最初の本について藤沢はダメな本と切って捨てていて、本田が書くべきは技術開発の本であるべきで、あの時期の本田が技術開発の考え方なり経験を書いてくれれば非常に価値ある文献になったのに。

的な事を書いているが、アレは流石にお人よし過ぎる。

本田の本当の開発姿勢や考え方は本田技研の部外者秘の秘伝中の秘伝であるべきで、

他人に教えてやる必要などない。

他所の人間は本田の製品から掴み取れば良いだけの話。

 

正直、藤沢なくして本田技研の成功は無いと思うが、藤沢一人でもソコソコの業績は残せたように思う。
本人も言っているが欠点の少なさで言えば藤沢の方が少なそうだから大失敗はしないだろう。本田だけなら凄い職人さんで終わった可能性が高い。
出会いと言うかタイミングと言うか。まぁ完全燃焼できたんだろうから良かったんだろうな。

まぁ、なんにしても、事業の悩み事の半分を完全に任せられる関係を作れたなら世界に打って出る事も可能ということね、しかし、これは稀なことだ。

 

凄いではなく変わってる点として

ポンコツ技術者に困って本田を捕まえたのが成功への切っ掛けだったせいか、

技術者をとても大事にする、技術者第一主義みたいなところは少し変わってるかな。

技術者のモチベーションを上げる、技術者の頂点が必ず社長。

これは万が一、第二の本田宗一郎が現れた時にキチンと受け皿になれる企業を作っておく意味もあるのかもしれない。

 


無料だと本田のホームページに物語調の社史があるから、そっちを読んでも面白いかもしれない。画像も多いし。それと、この本とをチラチラ見比べながら読むのも面白い。

何なら文章量も多い。

www.honda.co.jp

が、他の媒体で読むと不思議なくらいに藤沢の印象は消えてしまうので
一回は藤沢のこの独白を黙々と読んで藤沢の目線を手に入れておくのも大事か。

 

ゴジラと陰で呼ばれ、本田と並べば「極道かな?」と思える風貌の独学経営モンスターはちょっとやそっとでは片りんしか分かりませんが、

 

五木寛之による前書きには
「~醒めた目を持つ情熱家で、少女の感受性を秘めた実業家~」


いやいや五木さん…うーん、そうかな?。

 

過去にテレビ朝日だろうか?ドラマ化されたものがyoutubeに挙がっていた。

中々に熱い。

本田宗一郎
世界一にした影の男!
その激動の生涯!!

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