Aの記

読めば読むほど強くなる本を探しています。

「わが友 本田宗一郎」 井深大 (ホンダとソニーの偉い人)

わが友 本田宗一郎

 

井深大(いぶか まさる)
文春文庫 発売日:1995年03月10日 

 

自分の持ってるのは旧文庫版

 

井深氏の思い出と引用で構成されているので、凄く内容が濃い本と言うわけでもない、読める人は2時間かからず読み切ってしまうだろう。

 

有名人同士の「友」なんて言葉は上っ面感があるが、昭和30年前後からの交流だそうだ。ソニーがラジオを出して名が知れたところに「トランジスタ」をエンジンの点火装置に使えないかと相談に来たのがスタートだと。
結局、仕事自体は流れてしまったが、交流は続いたとのこと。

読むと本当に仲が良さそう。

 

これのTR-55が出た辺りからかな。

www.sony.com

 

物作りに長けた二人だけに響きあうのだろう、対談は盛り上がると言うかエスカレートする感じで、荒っぽい感じすらある。

昔の対談は井深も気の強さや若さがでているが、後になればなるほど穏やかな物言いになっていくのも面白い、本田はあんまり変わらない。

 

物作りとは実業とは企業とはこうあるべきと言う一種理想論が語られているが、今もどちらの会社も大企業で居られる辺り、後進の人も引き継げているんだろう。

 

官と絡むなとか本業以外での儲けに意識を取られ過ぎるなとか、現在の日本の産業界を見たら激怒必至のお二人です、ただ、下請けの意識(作れと言うもの作って)で物作りして新しいものが生み出せるかと言えば、難しかろうとも思うので。

この二人の言ってることは正しいのだろう。

 

尊い考え方と人間性の人達です、藤沢さん盛田さんはこう言う人達が存分に能力を発揮できる環境を作る為に尽力したのでしょう。

新しいモノに取り組む姿勢が学べる。

 

あと、日本が最初にやるべきは技術者に金を払うことですね。
良い技術者にはさらに金を払い、良い技術者を育てた者にはさらに高く払う。


ホンダを外部からの視点で語るのは面白いです、最初の失敗作のスクーターのデザインを売ってくれと言ってきたイタリアメーカーを断る話とか。
CVCCシビック貰った話とかね。

 

あと、幼児教育についても少しあるか、あの辺もいい。

 


井深氏、解説の秋山氏の両氏が、多分わざとやっていることで、
神様本田宗一郎を人間に戻す作業がある。

井深氏に向かっての本田の発言「女房より先に死にたい。俺は女房がいないと何もできない男なんだ」
や、講演会で本田に面白い話をさせる方法とか。
この辺は社内の人は書けない部分なので大事。

 

解説が最期に引用している井深氏の発言「~彼が先に死んでよかったんだ」
人の最期と言うのは大体において気が滅入る。

 

良く言えば「寂しがり屋」悪く言えば「孤独」な人だったのかもしれない、本田。

ネアカな孤独、人生ハードモード。

 

天衣無縫・天才に見える本田が、実は地に足のつかぬ、感情や執念の塊で
勉強を嫌い、本も読まず、科学の基礎知識すら身に着けていない。

 


それが、周りの全力のサポートでもってあそこまでなれたんだとしたら、

恐ろしいことこの上ないし、一種の悲しさと狂気を感じる。

 

が、井深氏は素人であることは欠点ではないと考えてるようで、心強い(誰が?俺がだ)。

 

先ずはゴール(何を作る・するか決めて)を設定して、方法は何でもいい。
取りあえずすぐできる方法や思いついた方法で試してみてダメなら別でやればいい、何度やってもわからなければ専門家に聞けばいい。

本田も井深もそんな感じらしい。

 

ただもう、本当の本当に大事なのは自分を認め大事にしてくる有能な相棒を見つける事だな。

 

井深氏の本田さんは飛行機が好きで…飛行機を作ったかもしれませんね

と言う文章があるが、1991年時点知られてないが、実は本田存命中に本田宗一郎に隠れて飛行機の開発は開始されていた。設計リーダーは社長に強く「本田宗一郎には言うな」と口止めされていたがトイレで本田と一緒になってしまって困ったと何かで書いていた。

飛行機開発にGOを出したのは3代目社長の久米だ。
本田社長現役時代の空冷押しに「水冷でしょうがぁ」(吾郎さん風)で出社拒否したりした人
ホンダは出社拒否する逸話がチョット多めよなぁw。しかもそれが社長だもんなぁ。
その癖、本田に内緒で本田が作りたいものを作ってくれるし、いいね。

 

無料で読める、3代目のインタビュー記事、PDFだからPC環境の方が良いかな

この本とは無関係だが人となりが感じられて面白いし、ホンダの企業精神が少し見える。

https://www.jsae.or.jp/~dat1/interview/interview040212.pdf

 

簡単に読める本だが、書いていることを自分で試してみないと
彼らの真意は分からんと思うので何か作ってみましょうよと言うことでした。

 

本田ソニーの協業の話を聞いて最初に思い出したのはこの本だ。

創業者存命中ですら1回チラッと上手く行っただけの関係。

 

友としては良いが会社同士となるとプライドの高い企業同士、バチバチになるだろう。

井深自身がそんな感じで書いてる。

上手く行けばとは言わない、面白くなればよい。

 

10代以来の再読だが、昔よりもよくわかる。年を取るのも悪くない。

 

 

紀伊国屋書店から引用

www.kinokuniya.co.jp

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出版社内容情報
今日の日本を築き上げたSONYの井深大氏とHONDAの本田宗一郎氏。二人が確かめ合った企業人の覚悟、そして男の誠実と友情

内容説明
町かどの小さな工場を、世界的企業のホンダとソニーに育て上げた本田宗一郎氏と井深大氏は、心を打ち明け、信頼しあえる仲であった。戦後日本の代表的経営者の二人は、40年間の交りで何を語り、確かめ合ったか。親友だけが記すことのできる“本田宗一郎の真実”、そこには明日の日本への大切なメッセージがある。

目次
本田さんと私
技術者としての使命感
ものをつくることへのこだわり
見たり、聞いたり、試したり
ふたりが、共に目指したもの―対談・一九六六年
「日に新た」
論理より直観〔ほか〕
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表紙の絵は本田

 

加えるなら「前書き」があって、本編は紀伊国屋書店では未記載文も含めて全13章で、解説が秋山ちえ子氏。

本田宗一郎が亡くなったのが1991年8月5日、この本の「まえがき」に書かれた日付が、1991年12月3日。
本田が亡くなってから4か月足らずで作られた物だ。


井深・本田による対談が、6,7,90年台と3つ、本田の本「俺の考え」「ざっくばらん」からの引用がある。

 


この本の内容に更に井深と盛田の対談まで加えた「ものづくり魂」
と言う本がサンマーク出版から出されているようだ。


ちなみにNHKで番組化もされたらしい
NHKで過去動画としてその内配信されるのかもしれない。