Aの記

読めば読むほど強くなる本を探しています。

年の離れた先輩しかいない会社

年の離れた先輩しかいない会社

 

正社員で入れて貰った会社で、割と若い頃。
自分の指導に当たる先輩は一回り以上年齢が上。

その部署ではその先輩と新人の自分が一番近い年齢で、それ以外は更に上の人しかいなかった。
学校の先生に何かを教わる雰囲気に近い。

 

僕の入る少し前に別部署にアルバイトで入っていた女性が、僕と年齢も近く雑談はした。
大手の経験がある方で結婚退職後、一段落したのでアルバイトだったかな。
パリッとしていてスーツでも着れば、高いビルのエレベータから颯爽と出て来そうな感じ。

 

彼女が「この会社おかしくない?」と二人っきりの時に呟いた。
少しフランク過ぎる言葉遣いだが、
少し(先輩+年長)で、女性特有の馴れ馴れしさもあり、
飲み会のアドバイスなど世話焼きしたがるタイプであった。

 

部署が違うので良く分からないが、彼女の部署はかなり年長の女性ばかり居た。

「ハッキリとは言えないが無言の圧力の様なものを感じるのだよ」とかも。


もう一度、やはり二人きりの時に「ここ気持ち悪い」と言って、そう間を置かずに辞めた。

 

彼女が辞めた次の日だったか社長が激怒して「なんで働きたいって来た奴がすぐ辞めるんだよ、お前ら何かしたんじゃないか?」
等と大騒ぎ。

 

断片情報を組み合わせると、
新知識を持った若い女性が慣れる前に、古参女性の一部が排除したかったのだろうなと言う印象を受けた。

「割に綺麗な若い女」と言うだけでもアウト説もありそうだった。

 

思えば彼女は流石に優秀で、辞める判断の速さに後々になって感心した。

そして、自分もそう長くは勤めなかったが、彼女が辞めてから僕が辞める迄の期間の長さがそのまま能力差に思える。


後に社内に通じた知人経由で話を聞いて、社長は死んだっぽいなと自分は受け取っている。

 

アルバイトの彼女の言った気持ち悪さは、成長を諦めた企業の一種の腐敗臭や死臭の様なものだったんだろうと思う。
そして、そこに寄生虫の様に最後まで喰らい尽くしてやると決めた人達の雰囲気が醸し出す何か、強めに言うと覚悟。


思えば火葬場の持つ天国感、打てど叩けど何も響かずに音が吸い込まれていくようなあの感じに近いモノがあった。


会社の若返りを図りたい社長が若い人を入れると、古参がドンドン追い出していくシステムが出来ていて、彼らの旧型生命維持装置になっている。

 

古参は会社がいつ潰れて良いように(99%潰れないが)準備はした上で、楽に回せる状態に最適化された仕組みを長年かけて作り上げていて、ハッキリ言えば新人は1人もいらないし入れてはならない状態。


しかし、そうと気づいて全員を辞めさせて1から会社を作り直す体力は社長にはもうない、そもそも技術的についていけない。

 

時流を読む天性の勘所みたいな物を持った人だと思うが、それを現実の商売に生かすには年を取り過ぎたか、どっかで楽をし過ぎた。

会社が軌道に乗った段階で一回降りちゃったんだと思う、普通に考えて企業規模が大きくなることは無いが潰れない仕組みになってると思う。

 

社内の既得権益の無い新規事業を作ろうともしていたが、基本がワンマン社長で、言われた以上の事をやる様な社員は居ないか、社長が潰してしまっていると思われる。

若手は古参が追い出す。


子供を呼んできても継がすのは無理そう。

詰んでいる。

 

ざっくり言えば、ゆっくり乗っ取られていったんだろう。

 

 

社長に色々な所に連れて行かれて、会社の外部の付き合いのある人に会ったり、これからの展望だとか聞かされた。

もしかしたら社内で裸の王様になっている自覚が既にあって、新人くらいしか語る相手が居なかったのかもなとも思う。
単純に若いのが珍しくて可愛がってる感じかもしれないけど。

 

悪人ではないだろうが、根本が苦労した商売人で自分と同等の苦労は人にさせてもOK、だからと従業員を絞り上げ続けた結果、自己保身の塊みたいな組織を作ってしまったと思われる。

 

何かの移動中に「一人前に扱って欲しいなら独立すりゃいいんだよ」的な事をオブラートに5重くらいにくるんで言ってたこともある。

 

先輩が言うには若い頃は滅茶苦茶恐ろしい人だったそうな。

自分が入った時はお爺ちゃんモードに近く、なんか色々くれる人だった。

僕は人に感謝をあまり伝えないし、貰ったモノを大事にもしないので怒られたりもした。


ただ、肉厚で凄い重いコートは珍しくて面白くて今も持っている。

落ちたモノを拾おうとするとコートの生地の硬さでお腹の辺りがつっぱるし、自転車に乗ると動きが制限されて危険。


そうね、ポール・ニューマンとかが着そうな奴。

そういえば、映画と本の趣味が良い人であった。

 

特にまとめる要素はないが、年の離れた先輩しかいない会社は終わってる可能性があるし、そこに居る社員が全員若手殺しの名手の可能性が有るから気を付けよう。