他人が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え
「裏モノJAPAN」編集部[編] 鉄人社 (2021/12/14)
単行本(ソフトカバー): 224ページ
出版社URLリンク、目次、書誌等。
30代から60代位の飲み屋に居た男性へのインタビュー集。200人分。
テーマは「20年前の自分に教えてあげたいこと」。
その多くは痛い目に会った体験や後悔、そこから導き出された助言など。
中には思いもよらない効果的な女性の口説き方や出世術、嫁さんに捨てられない方法なども。
「なるほど」と思うものあれば、「何十年も生きて来てその程度ですか」と言うものもある。
何にしても、背景に人生があるので、喋り言葉による読みやすさや下らない悟り方とは別に、一気に読み切れない重さもある。その多くは取り返しが付かないことばかりなので。
SNSを含めた情報発信やテレビに出演する人は、ある程度そのキャラクターを演じる必要があって、どうしたって無理と言うか空っぽな感じが出てしまう。
それに対してこの本は、生身が匿名で好感度もマネタイズもその後の付き合いも気にせずにインタビューに答えてるだけに、言える範囲が広く深くリアルな部分が出てる様に思う、下ネタが多いけど。
敢えて書かないが、女性絡みも身も蓋も無い文章が多く面白い。
女性にはちょっと読ませられない。
実家住まいの中高生が読むなら母親に見つからない方が良い、でも父親は面白がると思う。
でもまあ、20歳手前位なら読んでおいても損はないんだよなぁ、こういうの。
名著や古典には及ばないかもしれないが得るモノは多いはず。
普通の大人の話を聞く感じ、親戚のおじさんとか。
とは言え、あくまで酔っ払い個人の感想なので正しいか、再現性があるのか、不変の真理なのか と言うと微妙なものも多いんだけど、少なくとも本人はそう思っていて、誰かから与えられたキャラクター設定や役割ではないのだから、人間1人分の価値はある。
極端な発言の場合は、直後に反対の考えの人の言葉を載せてバランスを取ってるのも本の作りとして好感が持てる。
健康に関する考え方は30代と60代では随分違いがあるのもあって、この辺も面白い。
若い人が「サウナいいよ」と言えば、年長者が「いいわけないだろ、知人が死んでるっつーの」となる。
60代以上の人のインタビューは、専用の目印がページ上部について、ちょっと特別扱いだったりする。
まぁ面白い。人間は面白い。
んで、全体にシンプルな同じページ構成が繰り返されるので読みやすい。
字もそんな多くないので、大げさに言うと1ページを一息で読めてしまう。
また、為にもなると思う。
若い頃に読めたら大きなミスの一つや二つはしなくて済んだかもしれない。
これからの人生で役に立つこともあると思う。
良いものだ。
「仕事、女(妻、恋人、愛人)、風俗、酒、ギャンブル、ラーメン」
この辺が男の気にしてる事なんだなぁと、しみじみする。
親との関係性・介護問題や子育てに関する言葉が非常に少ないのも考えさせられる、この辺は怖いくらいにない。飲み屋で言いたかないか…。
勿論、酒飲んでなければまた違う事をいうだろうし、飲みに行かない人はまた価値観が違うだろうし、男で括るのは大きいかもしれないが、少なからず共通・共感する面有ると思う。
逆に女性版で、この本と同テーマのものも作って欲しいですわ、鉄人社さん。
そういうのは真面目本のみの会社にやって欲しいと言うだろうけど、お堅いとこには引っ張り出せない部分はかなりあると思う。
タイトルの「他人が幸せに~」の様に1インタビューごとにキャッチコピーの様に1文が大文字で書かれているのだけど、それがフォント(書体)が色々違って、そこでも表現しようとしてるのも感心する。手間かかるだろうに…。
章ごとに扉ページが有って、1ページに1インタビューで延々と。
その1ページはキャッチコピー文、本文、最下段に編集者のコメントと3つの要素で出来てる。
編集者のコメントは賛同、ツッコミ、困惑等色々あるが、インタビュー内容ほどのインパクトはない。これは脇役に徹しつつ、もう1回インタビュー本文を読み返そうかな?と思わせる感じで良い。
目次にある様にテーマごとに分けているが、アンバランスで10人位しかない章も割とある。
後書きがない。
前書きに本のテーマは書いてあるし、無くても良いのだろうけど、あったら尚良かった。あと表紙がカッコいいし、タイトルになった言葉もカッコイイ。
自分も20歳前後の頃に、明け方の牛丼屋によく居た事がある。
パッとしないか、くたびれた男ばかりでむさ苦しかったが、居心地の悪さは感じなかった、むしろ居て良い場所だったかもね。
文庫になるらしい、予約を受け付けている。
果たして、この良い感じの本の構成のままなのか改悪されるのか、おまけで後書きが付いちゃうのか全然つかないのか。