Aの記

読めば読むほど強くなる本を探しています。

今週のお題「上半期ベスト◯◯」、狂気の映画2作。

 今週のお題「上半期ベスト◯◯」があったので、これも何かの縁。

Amazonプライム・ビデオの「もう一度見る」にリストアップ(自分が見た映画がリストにあがる)された物から2作品。

特に、狂気を感じさせるものを。

 

  1. フルメタルジャケット
  2. 怪物圑

 

フルメタルジャケット

 

天才スタンリー・キューブリックの傑作戦争映画。

公開年は1987年、この辺はベトナム戦争の影響も色濃く、いわゆるベトナム戦争映画が多く撮られた最後の最後あたり。体感としての狂気がビシバシと伝わってくる。

 

鬼教官による特訓でのんびりした若者達が殺戮マシーンになる過程と、それまでの人生で手に入れた現代社会の常識や倫理観が戦場で壊れていくのが描かれます。

 

最後の支えは特訓で身に着けさせられた、兵隊としての身のこなしと命令の徹底と仲間意識のみ。

命令だから、戦争だからを言い訳に死の行進を続ける様は圧巻。

 

戦争を俯瞰させず、1人の人間(観客)が兵士の振りをして従軍するようなオドオドした感じなので、”歩兵にされる”と、こんな感じか~を味わった。

 

絵作りが上手な監督で、頭にハッキリした映像が幾らでも残る、その白昼夢だか地獄だか判別不能な映像世界を思い出す時に、トラウマと言ってしまうかもですが。

 

狂わないと生き残れないんすわ。

 

 

怪物圑(字幕版)

怪物圑(字幕版)

怪物圑(字幕版)

  • ウォーレンス・フォード
Amazon

 

原題は「Freaks」、邦題としても「フリークス」の方が馴染み深い様に思う。

このタイトルは初公開時のものらしい、「かいぶつだん」と読むのだろうか?。

 

ホラー作品や悪趣味系を取り上げた本であれば常連中の常連。

見世物小屋を舞台にした物語で、奇形や障害を持った本物の人間が役者をやっている。

1932年公開だが、当時でも問題になり上映禁止も有ったと言う。

 

僕が映画をよく見ていた時代はレンタルビデオからDVDに移り変わる辺りだが、

これは自分の利用している店には無かったので、Amazonプライムで初めて見た。

 

中学生頃にホラー映画の解説で読み憧れた映画がまさかのアマプラで視聴。

まぁ、感動ですよ、感慨深いです。

 

本に掲載されてる写真で見ると非常に怖い、怪物のように見える人間が多数出てくるのだが、映画で見ると人間であり表情があり怪物などではない事が分かる。

この映画の凄い所は彼らが生き生きと描かれていることに尽きる。なんならちょっと好きになる。

 

見世物小屋と言う、まぁ昔のサーカスの様なアウトローの世界の中で、

特徴ある肉体を活かし、自分ならではの役割をこなしつつ、彼らなりのルールと見世物小屋のルールの中でお互いを尊重し助け合い生きている。

 

ここに健気さとある種の弱弱しさを感じつつ見る事になるが、その弱弱しさを甘く見るとこうなるよと言う、しっぺ返しの作品でもある。

 

一部の健常者の歪んだ価値観こそが、この映画においては問題視されている。

肉体的には完璧と思える人間がその心の在り方でここまで醜く描かれるのかと参る。

 

ホラー枠で語られるが、肉体的な奇形や障害による怖さより、小さなやり取りの積み重ねが恨みや怒りのゲージを少しずつ上げていく精神的な怖さの方が強い。

 

弱者と思われる人間が静かに溜めていく怒りゲージに気付けず、強者のつもりの傲慢ムーブ。

 

サスペンスですな。

そうなった時に初めて、健気で弱弱しい弱者が異形のモンスターに変わる、監督は名手なんだと思う。

 

しかし映画商売として、奇形や障害を面白がるだろうと言う下心は有ると思われるので、褒められた作品ではない。

 

ないが、そこを敢えて商売にして自分の利益にしていった奇形、障害持ちの人間もいたはずなので、その辺のしたたかに生きる生命力の強さを感じられるし、実際にこういう人たちが居てこういう芸を見せてプロフェッショナルとして生計を立てていたことの記録でもある。

 

1時間ちょっとしかない映画なんでね、それで一生の記憶に残る作品が見られるんだから悪い話じゃないと思うんだけど、苦手な人は苦手か…。

 

トラウマになる人はなるかもか、まぁ実生活ならホラー映画をよく観ますよみたいな人にしか、この映画の話を振ろうとは思わないしな、無理にとは…。

 

狂いはしますが、狂った状態は少ししか出ないから安心です。