HSPブームの功罪を問う (岩波ブックレット 1074)
飯村周平 岩波書店 2023/01/11
A5 ・ 並製 ・ 88頁・682円
内容はHSPの解説と、HSPブームについての注意喚起と、現時点でHSPについて学者(著者以外についても)がどう捉えているか。
目次は以下、岩波のページから
はじめに
第1章 HSP「ブーム」の実情
1 HSPの「発見」
2 HSPはどこから来たのか?
3 HSPという言葉の扱われ方
4 HSPブームは身近なものに
第2章 HSPブームの功罪
1 HSPはなぜ広く受け入れられたのか?
2 HSPラベルと人々との相互作用
3 ポップ化されて広まったHSP
4 偏見や差別、誤解を助長する可能性
5 HSP自認がむしろ自己理解や他者理解を狭める可能性
第3章 「消費」されるHSPブーム
1 誰がHSPブームを「消費」しているのか?
2 HSPブームの「罪」とどう付き合うか?
3 HSPに関する学術的な情報源
おわりに
引用文献
著者は心理学博士で専門は発達心理学、現在は大学講師。
読むべき人は、
HSPかもなぁ、と言う人。お守り代わりに1回は読んでおくと良い。
陰暴論、スピリチャル、占い、が目にとまりやすい人も。
アダルトチルドレンとか発達障害、その可能性のある人も。
雑に言うと信じやすい人、騙されやすい人、傷ついている人だ。
良く言えば素直な人、正直な人か。
SNSとかで「私はHSPだから○○」みたいな文章書いてる人は、必読書。
大事な人生を損をしない為。
全部で90ページ程度、本編は80ページ足らずの小冊子。
HSP関連本を読んだことが有るなら1~2時間で読めそう。
関連本を読んだことが無くてもちゃんと解説してくれているので大丈夫、10分ほど余計に読む時間がかかるかもしれない。
この本は、自分はHSPだと思う事がどういう状態かを解説してくれている、個人差あるだろうが思い当たる文章も少なくないはず。
そして、
HSPと言う医学的にはあやふやな概念を拠り所にするのは、どっかのたった一人のおばさんの妄言を信じて生活するのと同じだよ。
それによって失われるものに危機感を持った方が良いよ。
と言う本だ。
実際はそこ迄酷くは言ってないが、その方向だ。
HSP、ざっくり言うと凄く「繊細な人」。
( はいぱー せんしてぃぶ ぱーそん = 超 感受性の強い 人 = HSP )
自分の生きづらさの理由をHSPであるとして、HSPだから日常生活・人間関係で普通の人以上に辛い思いをする。
しかし、同様の人が他にも幾らか居る、少数だが同様の性質をもった人、HSPがいるとして。
その人たちに向けて、こうすれば、あーすれば前向きに生きていける等と書かれた、一種の自己啓発本だ。
この分野の本がどうしてこんなに量産されたのか、メディアやネットでこんなにも持てはやされるのは何故なのかを分析している。
ブームのきっかけや受け入れた人達の層の分析など「流行」がどういうものかと言う観点で見ても面白い。
特にどの番組で取り上げらると流行るのかとか中々良い。
このブームに乗った人の傾向を掴もうとするのも面白いと言うか、うーん、なるほどとなる。
HSPとは何か、その考え方がなぜ受けいれられたのかに半分位はページを割いているが、「おわりに」あるこの文章が肝だ。
しかし、本書で論じた通り、実際はもっと複雑です。HSPと非HSPを分断するような発信、HSPを特別視する思想。HSPに対する、あるいはHSP自認者が持つ偏見や差別、誤解。HSPブームを「消費」する精神化クリニックや資格ビジネス、カルト団体。
引用文の一つ一つに対し本文では事例なり著者の考えなりを述べているので、その辺読むだけでも危機感が持てて、対応策もある。
自分がHSPだと思うなら、この全部に繋がる可能性が有ると思った方が良い。
特にHSPと言う概念が目くらましになって、発達障害その他への対応が遅れたり、医療行為風の何かに身を任せてしまったり、妙な世界に取り込まれない様にしましょう。
なんならHSP何とかって書いてる商売は全部が怪しい位の勢い。(じゃあ、この著者の本はどうなるんだよとなるが)
HSPアドバイザー、HSPカウンセラー、そんな短期間の勉強で取れる資格持った人ってなんじゃい?
そもそも資格保持者もHSP自認者ばかりじゃないの?。医者なの?ねえ医者なの?みたいな。
しかも、困ったことに医者も「お金になるんだHSPって、良し!いくぞ」と。
んで、これはHSPに留まらない、先にも挙げたアダルトチルドレン、他にも自己肯定感、アドラー心理学、その他を使って自分を理解・説明・救済しようとする人。
彼らは、これから新しい概念も生まれれば、それも採用していく。
しかし実際、救いになってる面もあるんだろう。
そういったモノを、その時々で「自分はそうだ!」と当てはめて、生きていく人に対して、しゃーないよ、生き難い世の中だしねと結ぶ。
しかし、本文に書いてないが、そう言ったモノ(科学を騙るインスタント宗教のようなものか…)に安易にすがるのでなく、
自分自身の問題を自分ごととして向き合え、何かのせいにするな、強くなれよ馬鹿!、食い物にされてるんだよ!!と書いてる様にも思う。
もうちょっと丁寧に言うと、覚悟を決めて旧来からある診断基準の検査を受けなさいと言う感じ。
実際は書いてない、感想。
僕ですか?
ええ、本文中の分析で流行のピークとされてる時期に読んだ。
「繊細さん」の本。第22刷。
実を言うと自分的には「繊細さん」の本の内容に結構納得してる。
読みやすいし、そりゃ売れるわと思う。
ちなみに、本文の中で最も代表的な本として引用されてるのも「繊細さん」の本。
HSPと題せず「繊細さん」と題したところに大成功のポイントがあると著者飯村氏は考えてる様だが、自分もそう思う。
(ただ、これはカルト宗教がその宗教名を言わずに勧誘する手口に似ているかもしれない。)
この本の表紙の色は「繊細さん」に寄せてるな、水色だ。書店で並べたらセットで売れるんじゃなかろうか?
功罪の「罪」を強めに取り上げているのは、HSP本には「罪」が書かれてないから。
そういう意味ではHSP本と合わせて一つともとれる。
HSPに興味ないなら、どちらもいらないかもしれないが、メディアを賑わす自己分析や自己啓発の世界には、この本で取り上げられた罪の面があるだろうから、自分は救われた、良い気持ちになったんだから放っておいてくれとするのでなく、他山の石としても役立つかと。
- 論文を読みやすくした様な手堅い作り。
- HSPの簡易的なテスト
- HSPのついて、学者から見て有用な書籍(著者の本も…)の紹介、ネット上で見るならここをと言うWebサイト紹介(訳わからん奴の作ったページよりかは良いのでしょう)あり。
- 参考文献紹介も丸まる4ページある。
薄い本の割に充実してる、良い。