悪魔のマーケティング タバコ産業が語った真実
著者 ASH編 ; 切明義孝, 津田敏秀, 上野陽子翻訳・解説・編集
出版社 日経BP社 2005.1
最も刺激的なタバコの本。
- 禁煙したい、させたい。
- 効果的なマーケティングの考え方を一つ欲しい。
- メディアを賑わす「〇〇にはこんな効能があった」にお腹いっぱい。
古本か図書館で読むかになる、絶版。自分も持ってはいない。
Amazonの画像の帯にある「タバコなんざ、ガキや貧乏人に黒人、あとはバカに吸わせておけ」は、アメリカのタバコ会社の上層部の人が語った言葉。
本当に酷い…。
随分前に読んだのでうろ覚えになる部分もあるだろうが勢いが出たので記事化しておく。
アメリカのタバコ産業の内部告発や公けの場で出た問題発言等を集めた本。
タイトルが「マーケティング」とある様に、マーケティング本としてみると有用に思える、常識の範囲で行うならマクドナルドも一緒だろう。
しかし、人の命や健康を消耗材として考える様な常識外のとこ迄踏み込む場合は、似た手法で悪魔のマーケティングになる。
兎に角、質が悪い。
ネットから目次をコピペ。
第1章 タバコと健康
第2章 ニコチンと依存性
第3章 子供たちを喫煙者に
第4章 タバコ産業の広告宣伝戦略
第5章 新しいタバコの開発-添加物/低タール/"安全な"タバコ
第6章 受動喫煙の恐怖
第7章 新興市場を狙え-アジア、アフリカ、旧東欧
第8章 「女性」という最後の巨大市場
これに日本版の特典みたいな感じで日本の研究者の章が加わる。
特にJT(日本たばこ産業)についての文章は、原著には多分ないだろう。
タバコ産業が海外では訴訟対象になっているが、それはタバコの企業が訴訟対象になっている。
しかし日本は国が訴えられている。つまり国がタバコの健康被害に加担してしまってると、それは珍しい例なんだと書いてある。
本編
まず、タバコと言う商売の重要なカギはメーカーの負担するコストのかなりの部分が広告費である、タバコ産業はイメージ産業だと言う点。
如何に、タバコはカッコイイか、タバコを吸うとどんなに良い感じになるかをひたすら広告していく。
記憶の片隅に刻印するだけでも結構違う。
だからある時期まで色々な所にタバコのロゴやマークが貼られていた。
男の子的には車のレースでF1が印象深い。
記憶が微妙だが、映画やドラマの良いシーンにタバコが多いのも関係あるかもしれない。
テレビCMの品質も異常に高い。
それは高額のお金を突っ込んでCM制作しても元が取れるイメージ産業だから。
(正直、タバコ(ついでに酒、ウイスキーとか)のCMは大好きだ。)
で、吸わせてしまえば勝ちなので、ひたすら広告を打つ。
法律的にはアウトだが、子供は隠れて吸うのでそこを見越して子供にガンガンアプローチしていく、早く吸わせれば吸わせる程に禁煙が難しくなるので、キャメルのラクダを使った子供用のアニメまで一時期はあったらしい、大きくなってから吸うにしても小さい頃からメーカー名に親しませることによって、ブランドに対してのある種の忠誠心を植え付ける事も可能。
なんで、子供の目に触れるようなスポーツとか色々な部分に広告を出せないように規制されていく。
と、今度は女性をターゲットにタバコを吸う女性は大人っぽいとかお洒落とかってイメージ戦略を取り常習者にしていく。
タバコの健康被害が周知されると、今度は健康に良いタバコを売る。
低タールだメンソールだとか言う売り方で。
今でも思い出すがこのCMなんて素敵過ぎる、大好き。
これのプールに飛び込む奴が有ったと思うのだけどyoutubeに見当たらない。
ラッキーストライクとかマルボロとか無骨な男っぽいイメージ(それも好き)でモクモクしてる感じだったのが、
これなんて煙が一切出なさそうにすら見える。
ところが、ニコチンは一定量以上摂らないと脳は満足しないので、
低タールとして売るタバコが普通のタバコと比較して1本あたり10分の1のニコチン量であれば、実は10本吸いたくなるのだそうだ。
実際はそこまで吸わないまでも、1本で済む人が数本吸う事が出てくる。
なので、タバコは売上を落とすことない、むしろ上がる。
当然、健康に良いわけもない。
電子タバコも脳みそにニコチンを味わさせる為に注射するイメージで危険性は大差ない(18年前の電子タバコなんで今は分からない)
その国でタバコへの知識が高まったら、今度は後進国に売りに行き同様のサイクルを回す。
要は人間を使った焼き畑的な産業だ。
帯文にある様な外国のタバコ産業の人の発言はムカムカすること請け合いで是非読んで欲しい、いっぱい載ってる。
これ読むだけでも、この人たちにお金を支払うのは嫌だなぁと思うだろう。
タバコの会社の人はタバコ吸わない的な文面は、テレビの会社の多くの人はテレビ見ないにも似て、本当どうしたもんかなと思う。
客を徹底的に馬鹿にしないと商売って成り立たないのかなぁと悲しくなる。
科学もお金を出した人に都合の良い答えを出してくる。
タバコ産業に有利な研究成果を発表する研究所や研究者についての文章は目を開かせてくれた。
そこだけでも読んで欲しい。
例えば、「タバコを吸って肺がんになる確率より交通事故に合う確率の方が高い。」
みたいな説だ。
こう言うのを研究する機関があるのだそうだ。
これをどっかしらのメディアを通じて流すと、なるほどそうかとなる人も出てきてしまう。
普通に考えれば非喫煙者と比較して、交通事故に合う確率は同等でプラスαで肺がんになる確率の高さが上乗せされるので死ぬ確立は上がってるはず。
しかし、じゃあ良いよねと吸う人も居たりして、嫌な言い方をすればそれで吸ってくれる人を狙っている。
これが研究所だけじゃなく、単に研究者(肩書的には○○大学教授だったりする)でも居るわけだ。
タバコに限らず、
「〇〇が身体に悪い」と言うのがあれば、どっかで「〇〇は体に良い面もある」と言う研究成果が出てくる。
実際そういう面もある(頑張って探し出す)のだろうが、その研究者が居る大学の近くに〇〇作ってる大企業があったり、〇〇大企業の講演会でその研究者が講演してたりなんてことが起きる。
彼らが嘘を言う訳ではない、それをやったら研究者でいられないだろう。
タバコの害を否定するのではなく、タバコの良い面をアピールしたり、タバコ以外にも悪いモノってあるよねえと論点をぼやかしたりする。
要は科学・研究者・有識者もお金を出してくれた人に都合の良い答えを出してくれる。
これを強く教えてくれたのがこの本だった。
結構前の本だが面白いんで、文庫化とかしてくれると良いのだけど。
ただタバコの文化撲滅っていうのも違うのよね、
出来ちゃったものは仕方ないから作品は残して欲しい。
途中にも書いたようにタバコが主で出てくる映像作品ってホントに印象に強いものが有る。
映画でもカッコイイシーンあるしね。
映画からタバコのシーンを消すことは無いだろうけど、漫画とかね、ゲームとか割に改変が利くものに関して変な修正がされないで欲しいと思う。
18禁にするなり冒頭に注意書き足すなりしてオリジナルの作品のままで有って欲しい、何も削らずにね。